台本置き場 アリス

ニュースキャスター「次のニュースです。先月発見された眠り病の感染者が昨夜8人に増えました。この病気に感染すると、昏睡状態に陥りやがて衰弱して死に至ります。治療法も感染ルートも未だ判明しておらず、厚生労働省は…」

 

(メアリー上手登場)

 

メアリー「お姉ちゃん。あたしね、今日可愛いケーキ屋さんに行ったの。あたしが好きなショートケーキもあったし、お姉ちゃんが好きなモンブランもあったよ。雰囲気もとてもよくてね、絶対お姉ちゃんも好きだと思うからさ!……いつまでも寝てないで早く起きてよ。」

 

( 数個のクラッカーの音 )

 

メアリー「!? な、なに!?」

 

(白兎が上手から登場)

 

白兎「はいはいはい!おめでとうございます!」

 

メアリー「え?」

 

白兎「おや、失礼。僕の名前は白兎さ。どうぞよろしく。それで…お嬢さんの名前は?」

 

メアリー「メアリーだけど…」

 

白兎「ではメアリーさん。君は名誉あるアリスに選ばれた!そして君はアリスの名と共にゲームの参加権を手に入れたことになる」

 

メアリー「ゲーム?何を言ってるの?」

 

白兎「ルールは簡単。僕を捕まえることさ。そうすれば君の願いを何でも一つだけ叶えてあげよう。僕ってば、太っ腹!」

 

メアリー「ちょっとあなた!人の話を聞いて!」

 

白兎「では、早速出発しよう」

 

メアリー「よく分からないけど、あたしはそんなゲームに参加する気ないわ」

 

白兎「まあまあ、向こうでは君のお姉さんも待っているんだから。」

 

メアリー「え!?それってどういうこと!?なんであなたお姉ちゃんのこと知って…ってきゃあああ!落ちるうう!」

 

(白兎上手はけ)(メアリーふすまから登場)

 

メアリー「いってて…、ここどこよ…見たこともない場所。とりあえず人を探しましょう。誰かー!誰かいませんかー!!」

 

(チャシャ猫下手から登場)

 

チャシャ猫「うるさいにゃ!誰だ、にゃーの昼寝の邪魔をするのは!」

 

メアリー「うわっ!猫が喋った!」

 

チャシャ猫「猫が喋るなんてこの国じゃ当たり前にゃー。なにをとぼけて…ってもしかしてその姿はアリスかにゃ?」

 

メアリー「またアリス…。とりあえずあなた、名前は?」

 

チャシャ猫「にゃーの名前はチャシャ猫にゃ。」

 

メアリー「えーと…、チャ、チャチィ猫さん?」

 

チャシャ猫「チャシャ猫ニャ!」

 

メアリー「じゃあチャシャ猫さん、ここはどこ?」

 

チャシャ猫「ここはここニャ。」

 

メアリー「そうじゃなくて!そのーなんとか町とか、何丁目とか!」

 

チャシャ猫「そういわれてもにゃ…ここは不思議の国だから何とも言えないにゃ。」

メアリー「不思議の国?」

 

チャシャ猫「そうだにゃー。その様子だと本当に何も知らないんだな。ちゃんと白兎の説明聞いてたかにゃ?」

 

メアリー「知らないわよ。その白兎は急にどこかに行っちゃうし。」

 

チャシャ猫「ならにゃーが説明してやるにゃ。実はここは夢の中だにゃ。そしてにゃーはチャシャ猫役、あんたはアリス役だ。」

 

メアリー「じゃあ、現実世界ではあたしも寝ているってこと?」

 

チャシャ猫「そーゆーことにゃ。めんどくさくなったから後のことはほかのやつに聞け。ちなみにあっちに行くと、ハートのクイーンの城。そっちに行くと帽子屋の家で今ちょうどうさぎの奴とパーティーしているらしいにゃ。」

 

メアリー「それって白兎のこと?」

 

チャシャ猫「さあにゃ。それじゃにゃーは先に行ってるにゃ。またにゃー。」

 

( チャシャ猫上手はけ)

 

メアリー「え、ちょ、待ってー! はぁ、とりあえず行く宛もないしあたしも帽子屋の家に行ってみよう。」

 

(メアリー上手はけ)(メアリー客室登場)

 

メアリー「もー!どこよ、帽子屋って!!完全に道に迷ったわ。」

 

(メアリー部屋うろうろ、上手はけ)

 

(白兎、マッドハンター、お姉ちゃん上手登場)

 

マッドハンター「そういえば、君は何でこの世界に来たの?」

 

お姉ちゃん「おそらく、眠り病にかかってしまったんだわ。

マッドハンター「眠り病?」

 

お姉ちゃん「ええ、今現実の世界で流行っているらしいの。治療法も見つかってないみたいだから…、暫く帰れそうにないわ」

 

マッドハンター「なら家族は心配しているだろうね。」

 

お姉ちゃん「まあ家族って言っても血の繋がってない妹だけどね。お転婆で世話が焼ける子よ。」

 

マッドハンター「へー、ぜひともあってみたいものだね。」

 

(チャシャ猫上手登場)

 

チャシャ猫「やっほー、にゃーも混ぜてにゃ!」

 

マッドハンター「いいよ」

 

お姉ちゃん「そうだ!せっかくだし、この会場の人ともパーティーしましょうよ!」

 

チャシャ猫・白兎・マッドハンター「さんせーい!」

 

(お菓子を配る)

(メアリー上手登場)

 

メアリー「すいません、だれかいますかー。」

 

マッドハンター「あ、はいはーい。」

 

メアリー「どうも、こんにちは。チャシャ猫さんに言われてきたんですけど、帽子屋さんであっていますか?」

 

マッドハンター「おや、よく知っているね。俺の名はマッドハンター。その様子だと君はアリスかい?今日はどんな用事かな?」

 

メアリー「いや、あの…」

 

マッドハンター「新しい帽子をお求めかい?君には淡い赤色の帽子が似合いそうだ。なにはともあれ中に入りなさい。」

 

メアリー「あーーー!!」  白兎「わーーーー!」

 

メアリー「お姉ちゃん!なんでここに!?」 白兎「え、無視…?おーい!」

 

お姉ちゃん「なんでって…、急に視界が暗くなったと思ったらここにいたのよ。」

 

メアリー「お姉ちゃんが目覚めなくなってからあたし凄く心配したんだよ!よかった、無事で…。はやく元の世界に戻ろう!」

 

お姉ちゃん「私だって戻りたいわよ! でも方法がわからないのよ!」

 

メアリー「それなら簡単よ。白兎を捕まえてお願いすればいいの!」

 

お姉ちゃん「白兎?」

 

メアリー「白兎は白兎よ!例えば…ほら、こんな感じの!」

 

メアリー「…あ。白兎!?」

 

白兎「やっと気づいてくれたー。じゃあ早速僕を捕まえって…足はや!」

 

メアリー「つっかまえたー!!」

 

白兎「あーあ、逃げ切れると思ったのに。」

 

メアリー「ゲームクリアだから願い事を叶えてくれるんでしょ?それなら、私とお姉ちゃんを元の世界に戻して!」

 

白兎「…残念だけど、それはできないんだ。」

 

メアリー「な、なんで!?」

 

白兎「なんでも一つ願い事を一つだけ叶えると言ったけど、叶えられるのは一人の一つの願いだ。つまり、その願いで元の世界に帰ることができるのは君かお姉ちゃんだけなんだ。」

 

メアリー「そんな…。」

 

白兎「幸い、時間はまだあるからね。どちらが帰るのか、はたまたここに過ごすことにして別の願いをかなえるか、よく二人で話し合うといいよ。僕たちは外にいるから願いが決まったら呼んでね。」

 

チャシャ猫「なんだか重たい雰囲気にゃー。落ち着かないから帰るにゃー。ばいばーい。」

 

(チャシャ猫・白兎・マッドハンター上手はけ)

 

メアリー「お姉ちゃんとこういう風に話すの久しぶりだね。」

 

お姉ちゃん「……そうね。」

 

メアリー「お姉ちゃんは元の世界に戻りたい?」

 

お姉ちゃん「ええ。ここも良いところだけど、現実でやり残したことがあるもの。」

 

メアリー「そっか。…私も来たときはそう思ってたんだけど、今はこっちの世界のほうがいいな。」

 

お姉ちゃん「え?」

 

メアリー「最初は意味が分からなかったけど、白兎さんもチャシャ猫さんもマッドハンターさんも良い人だって気づいたの。景色もとても綺麗で本当に不思議の国みたい!」

 

メアリー「それにね、こっちの世界ならお姉ちゃんと話ができる!私だけが元の世界に戻ったってお姉ちゃんとこうやって話したりできないのは嫌だもん。このままずっとこの世界の人とお姉ちゃんと暮らしたい!」

 

お姉ちゃん「ふふ…」

 

メアリー「ちょっと、笑わないでよ。」

 

お姉ちゃん「ごめんごめん。すごくメアリーらしいなって。」

 

メアリー「もー。」

 

お姉ちゃん「…うん、そうだね。そのほうが楽しそうかも。」

 

メアリー「でしょう!」

 

(白兎上手登場)

 

白兎「願い事が決まったようだね。さて、どちらが元の世界に帰るつもりだい?」

 

メアリー「白兎さん。私たち二人ともここに残ることにしたの。願い事はまた今度考えるよ。」

 

白兎「ほう、お姉ちゃんのほうもそれでいいかい?」

 

メアリー「それでいいよね、お姉ちゃん。」

 

お姉ちゃん「……。」

 

メアリー「お姉ちゃん?」

 

お姉ちゃん「メアリー…。白兎さん、やっぱり私は帰りたい!!」

 

メアリー「え?」

 

白兎「その願い叶えましょう!」

 

(メアリー・お姉ちゃん板付き)

 

お姉ちゃん「ごめんね、メアリー」